夢洲を歩いた日
足元に残った熱気を、
短い記録として。
閉幕まで残り2週間を切った10月の夢洲。夏よりも人が増え、どこのパビリオンにも行列ができていた。この日、特に何かを目的にしていたわけじゃなかった。ただ歩いて、見て、感じたことをそのまま残しておきたかった。
朝、まだ人が少ない時間の
大屋根リング。
開場直後の夢洲は、静かだ。入場ゲートを抜けると、全長2キロの大屋根リングがそのまま空に向かって伸びている。木造建築としては世界最大級。でも眺めていると、その「最大級」という言葉が少し小さく感じられる。
リングの上を歩くと、会場全体が一望できる。いくつかのパビリオンはすでに開場待ちの列が伸びていて、あと2週間でここがなくなると思うと、妙な感じがした。
「万博が終わったら、ここはどうなるの?」隣を歩いていた子どもが、お父さんに聞いていた。お父さんは少し間を置いて、「わからないけど、きっといい場所になるよ」と答えた。
広すぎる。でも、それがいい。
夢洲会場の総面積は約155ヘクタール。東京ドーム約33個分。一日で全部を見ようとすると、確実に体が先にギブアップする。
だから諦めた。見たいものだけ見る。気になる人の流れについていく。列が短いパビリオンに入ってみる。そうやって歩いていると、思いもよらない場所で立ち止まりたくなる瞬間が来た。
計画通りにいかないことが、この会場の正解だったのかもしれない。
各国パビリオンを繋ぐ
路地のような通路で。
大きなパビリオンの間には、細い通路がたくさん通っていた。マップには載っていない小さなブースやキッチンカーが並んでいて、歩くだけで世界中の匂いが入ってくる。
インドのキッチンカーで食べたカレーの香りは、今でもふっと思い出す。スパイスの熱気と、現地の人の「おいしいよ〜!」という明るい掛け声。あの一皿の前で足を止めた瞬間が、なんだかとても万博らしかった。
昼はパラソルの下で見知らぬ人同士が肩を寄せて休み、夜になれば木の電飾と屋台の明かりで、同じ通路が別の場所になる。一日のうちに二度楽しめる場所だった。
日が落ちると、夢洲は変わる。
18時を過ぎると、空の色が変わりはじめる。大阪湾から吹いてくる風が少しだけ涼しくなって、パビリオンの明かりが点灯し始める。
この時間の夢洲が、一日で一番好きだ。疲れた足と、なんとも言えない充実感と、まだ終わってほしくないという気持ちが混ざり合う。
万博が終わったら、この感覚を思い出すために何度でも読み返したい記録になりそうだと思いながら、最後にもう一度だけリングを見上げた。
また来ようと思いながら、
閉幕を迎えた。
あの日から12日後、万博は閉幕した。「また来よう」と思っていたのに、結局それが最後の夢洲になった。でも後悔はない。あの日歩いた12キロ分の記憶は、ちゃんと残っている。
写真には残らない温度のことを、ここに書き留めておく。
あの日の記録
夢洲を歩いて残した写真たち。記事では語りきれなかった会場の空気を、もう少しだけ。